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燻製の作り方は、祖父の方法を伝承しています。じいさんが化けて出たら「全然変わっていないな」と驚くだろうね(笑)。
おやじの代になり食品添加物が登場した。当時は、輸送技術が確立していない時代。おかげでものが腐らない、食中毒にならない。日本人の寿命も延びた。今では諸悪の根元のようにも言われるけど、立派な役割を果たした面もあるんです。
そのうち、世の中に「無添加」の流れが出てきて、うちにも「無添加なら売ってやる」という要望が来た。有機野菜や自然食品を全国的に宅配している業者「らでぃっしゅぼーや」です。
要望は、食品添加物以外にも化学調味料、養殖物、輸入物は一切使わないというものでした。らでぃっしゅぼーやの分だけ作り分けるのは難しい。それなら全部切り替えよう、と今のスタイルになったわけです。
食べ物屋にとっては、食品添加物や化学調味料を抜くのは清水の舞台から飛び降りるようなものです。知り合いからも「味が変わるからやめとけ」と言われました。
ただ、食品添加物はカビ止め(ソルビン酸カリウム)を使っていた程度で、抜く自信はありました。大して効いていないと思ってたんですが、抜いた途端に原材料を入れていた樽がカビだらけになった。改めてその効力には驚きました。カビ止めを抜いたことで大量生産ができなくなり、生産量は2割減らしました。
グルタミン酸ソーダ(化学調味料)を抜くのは、最初は自分でも自信がなかった。グルタミン酸ソーダとは、いわゆる「うま味」のことです。
そこで考えたのは、素材を燻(いぶ)してタンパク質を分解してやればいい。そうすればアミノ酸が生まれ、素材の持っているうま味が引き出されるはずです。それに塩、砂糖、みりん、酢を組み合わせて味を設計しました。この4つの調味料も銘柄を厳選しています。素材にあった加熱、乾燥、熟成方法なども研究しました。
結果としては、味が自然に近くなった。心配したほどクレームもなくホッとしました。2年目からは味も安定してきました。
出来るだけ素材のうまさをこわさないで作り上げる。そこが面白いですね。ただ、問題は売れるかどうかです。
(第2回1999.04.28)
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